伝統の加賀毛バリ

北陸フィッシングショーと云うイベントがある。これに呼ばれて金沢にいく事になるが、何しろあの魯山人が愛した加賀の地であり、九谷焼、山川や輪島の漆器など器に食を乗せてアートを作り出す、その北陸の都だ。
勿論、金沢の夜は北陸の魚と美味しい酒を堪能し、「最後はニシン蕎麦で仕上げだ~~!」となったのだが、それとは別に大きな発見をした。
それは、多くの芸術的な工芸品を生み出した加賀だが、そのベースには前田100万石の治世と繁栄があるだろう。その文化の中で、当時(江戸時代)武士にだけ許されたのが鮎釣りらしく、その前田家の肝いりで「加賀毛バリ」という伝統工芸が生まれたのである。
その歴史ある加賀毛バリの伝統を守っているのが、このフィッシングショーで一緒だった目細商店なのだ(それも知らず、釣具の問屋さんでもあることから、かの金沢の夜を、さんざんご馳走になり、一緒に酩酊?、徘徊して歩いた)。
普段、私がやっているのはルアーフィッシングで、これは西洋疑似餌である。まあ、毛ばりはその中でもフライフィッシングに共通するものが多く、それが500年も遡って、この地で作られていたことを考えるとこれは凄い(今も目細商店が当主20代目として、その伝統を受け継いでる)。
そのフィッシングショーで目細さんの奥様が、その毛ばりを巻く実演をされたが、それは思ったよりも時間を掛けた丁寧なもので、まさに工芸品である。その素晴らしさは、それを素手で取ってみることを躊躇うような美しいものだ。
目細さんの説明では昆虫の模倣でありすべての加賀毛バリは足が(鳥の羽で作ったもの)6本あると云う。なるほど、私はカゲロウの幼虫、川虫に似せて作ったものと思い込んでいたが、そのあたりも大きな勘違いである。
確かにヤマメやイワナこ昆虫類を好むが「鮎はミズゴケ」と云うのが相場のはずだ。子供の頃は、この毛ばりで良く鮎釣りをし、加賀の毛ばりの話は父から聞かされたが、それは子供心だから、毛ばりであれば鮎もヤマメも似たようなものとアバウトに考えていたのだろう。
金沢から島に帰ってきて、どっかにヤマメやイワナの毛バリを大事に仕舞い込んであることを思い出した(何故か海の八丈島なのに)。そこで、つり道具をアッチコッチ引っ繰り返して、その釣り具部屋の隅から大事にしまいこんである、毛ばりの箱を見つけ出した。
やはり、残念な事にその毛ばりは、あの金沢で見た芸術的にまで美しい「加賀毛ばり」とはまったく別のもので、目細さんの言う足が6本の昆虫を美しく再現したものではない。、判ってはいたが、それは安っぽい普通の毛ばりである。
たかが毛バリだが、これが歴史の重さなのだろう。


